ビジネスマンではない父より息子への果てしない手紙

人生の荒波に乗り出した息子たちへ

『君たちはどう生きるか』

​ もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからといって、ただそれだけで言われた通りに行動し、教えられた通りに生きてゆこうとするならば、コぺル君、いいか?それじゃ君はいつまでもたっても一人前の人間じゃないんだ。子どものうちはそれでいい。しかしもう君の年になると、それだけじゃダメなんだ。
 肝心なことは、世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。そうして心の底から、『立派な人間になりたい』という気持ちを起こすことだ。
そうでないと君はただ『立派そうに見える人』になるばかりで、本当に『立派な人』にはなれないだろう。
 世間には、他人の目に立派に見えるように、見えるようにと振舞っている人がずいぶんいる。そういう人は自分がひとの目にどう映るかということを一番気にするようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい、お留守にしてしまうものだ。僕は、きみにそんな人になってもらいたくないと思う。

【文庫 】君たちはどう生きるか (岩波文庫)

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