ビジネスマンではない父より息子への果てしない手紙

人生の荒波に乗り出した息子たちへ

いいかおまえら(2)

今日は幸せになる秘訣を教えてやる。それは、「諦める」ことである。
…と言うと「なんだそりゃ」と思うだろう。だが誤解しないでくれ、「今の自分に満足してしまえ」と言ってるわけじゃない。「できないことを思いわずらうな」と言いたいのである。
たとえば、天気が悪いことを恨んでもしょうがないし、過去の過ちをいくら悔やんでも戻ってやりなおすわけにはいかない。

それより、今、ここで自分が事態を少しでも動かせることに頭や身体を使った方がいい。
そうやって、身のまわりから良い方向へ環境を変えていくうちに、自分の影響力も大きくなっていく。

可能性を探り、機会を見極めてチャレンジするのだ。
自分の不幸を他人や社会や環境のせいにするのは勝手だが、そうしたところで幸せがやってくるわけでもない。
できないことを嘆くより、できることを、自分の手の届く範囲から変えて行かなくちゃ。

そのプロセスも幸せの一部分だ。

“幸福とは、
旅の目的地のことではなく、
旅のしかたのことである。”
(マーガレット・リー・ランベック)

それから、あたりまえのことだが、幸せってやつは他人と比較して優劣をつけるもんじゃない。
だけど今の世の中、人を競争させ優劣を付けて選別するシステムになっているから、ついついそれに慣らされてしまって、優越感と劣等感の狭間で苦しくなってしまうことがある。でも、そんなの、かまへんねん。他人の物差しに振り回されたらあかん。(…なんで関西弁?)
母さんもよく言ってたよな。「よそはよそ、うちはうち!」

さて、父さんは子どもの頃、漫画家になりたかったが、叶わなかった。いま建築家としてもエンジニアとしても、まあそこそこ食って行けてはいるが、鳴かず飛ばずだ。そしてこの先も貧乏なまま、平凡な一市民として歴史に名を残すこともなく死んでゆくんだろうと思う。

それだけ見るとつまらん人生だが、これだけは言える。
おまえらの父親であれた日々、おまえらと一緒に過ごせた時間は、父さんにとって最高の時間であったと。 

そんなかたちの幸せも、あるんだ。